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第24回水郷水都全国会議、東京大会
資料
 

ここに掲載する文章は第23回松江大会の記念シンポジウムにおける基調提案です。
大会資料集(別冊)よりコピーしたものです。

記念シンポジウムヘの基調提案

水郷・水都運動の到達点とこれからの方向性について

                       竹下幹夫
                    (財)宍道湖・中海汽水湖研究所事務局長
                            (現地実行委員会事務局長)

 1984年に琵琶湖で開かれた「世界湖沼環境会議」が採択した「琵琶湖宣言」は、水環境問題を解決するためには、住民、行政、科学者の3者の協力が欠かせないことを宣言した。水郷・水都全国会議は、この「世界湖沼環境会議」に集まった住民により、各地の運動の交流を目的に結成された。爾来22年間、全国各地で年一回の全国大会を開催し、水と暮らしに係わる取り組みの交流を行ってきた。
 開催地は、湖沼(宍道湖、霞ケ浦など)、河川(吉野川)、水郷(柳川)、湿原(釧路)、湧水(富士市)、都市と水(大坂、東京)などであり、テーマも多様であった。その間、個別地域課題あるいは全国課題において、住民の取り組みが前進して当面の目標を達成したところもあれば、そうならなかったところもある。
 今回のシンポジウムでは、
@住民運動の到達点(その成果と問題点、また教訓は何か)、
A当面する課題(住民運動に何か求められているか)、
B今後の基本方向(水郷・水都運動はどこへ向かうべきか)、
の3点について、忌憚ない議論をお願いしたい。

1 水郷・水都運動はどこまで来たか-その到達点と現状

 この22年間の変化は大きかった。水環境をめぐっては、地方分権の時代に移行し、国土形成、河川・湖沼、環境等に係わる政府の政策が変化した。国家財政の危機が進行した。また、環境保全運動にも係わる動きとしては、政党間の組合せや労働運動の動きにも大きな変化かおり、住民意識も変化してきた。そのような変化の大きな時代にあって水郷・水都全国会議は、「状況をどこまで変え得たのか」、「運動の到達点」と「現状」について認識を共有する必要かおる。たとえば;
 @ 諌早、川辺川、吉野川、宍道湖などでの開発と水環境問題での前進と逆流現象
 A 湖沼・河川の水質改善の到達点、成果と問題点
 B 人と水のふれあい、水のある地域づくり、住民の環境意識・参加・活動
 C 行政は変わったか。環境保全・住民参加が盛り込まれた新河川法の実施状況の評価
 D 住民は変わったか。住民の連帯・連携・ネットワークの全国状況  など。

2 22年間の取り組みから何を学ぶか-その教訓

@ 現場で住民が力をつけたところと、そうならなかった地域では、成果に達いが生まれている。改めて、世論に支えられた自立する住民運動の重要性を再確認する必要がある。
 水環境問題への住民参画は、多くの場合は「批判」にはじまり、「参加」(審議会等への代表派遣)、「自治」(住民主体による環境管理・活用)へとすすむ。それは、「将来のあるべき姿」に向かって科学的に住民の力によって「現状の問題点」を解決する改革運動である。そのためには、「科学に裏付けられた主張」と「多くの世論の支持と共感」の輪を広げることが大切である。これは、住民の環境運動を発展させた地域での教訓である。

A 水郷・水都全国会議の第1同大会では、「親水権」の理念を提起した(「松江宣言」)。
 そこには、当時の時代的、地域的な制約があったことも事実である。その後、水郷・水都運動は全国的な展開を遂げ、豊かな経験を持つようになった。この経験を踏まえつつ、現在及び将来への展望に立って、水郷・水都運動が目指すべき基本的な方向性、理念・目的を点検し、新たに確認することも重要な課題である。
 今日、維持可能な社会の構築が社会的要請となっている。維持可能な社会における水資源の管理・活用には、将来の世代の欲求を充たしつつ、現在の世代の欲求をも満足させる「賢明な利用」原則がふさわしい。また、地方分権の時代を迎えた今日では、地方自治体と関係住民が協力し合いながら、水資源を“地域資源”として、「賢明な利用」原則のもとに置く、水資源管理の新しい仕組みづくりが必要ではないか。
 住民の環境運動は、地方自治体(市町村、都道府県)によく働きかけ、よく話し合、維持可能な社会における水資源管理のおり方について、共通の理解と協力・共同を広げる努力を諦めてはならない。地方自治体もまた、そのための努力を借しんではならない。

B 「“敵”は少なければ少ないほどよく、味方は多ければ多いほどよい」は、運動の鉄則である。住民運動内部での連携と協力・共同の発展に努めることは、関係する者の義務であり、責任でもある。
 NPO法以降、政府(国、地方)が特定のNでPO法人に資金を供与し、「官製住民運動」を育成するケースもなしとしない。それは、ひいては住民と行政との真の協働をも損なうことにもなりかねないため、住民運動内部での自覚ある取り組みが必要である。
 資金を受けても行政との緊張関係を係ち、主張すべきは主張し、協働すべきは協働し、他の住民団体との連携を重視することが必要である。

C 水郷・水都全国会議に日常的なネットワーク機能があれば、相互協力によって個々の運動を励まし、また、政府・国会の政策動向に対してより有効な対応ができたのではないか、というのが反省点の一つである。年一回の各地持ち回り会議方式のメリットはあるものの、全国的な研究・情報の積み重ねと、中央政府の政策への機敏な対応のための体制改善が望まれる。

3 水郷・水都運動の発展のために−その基本方向と課題

@ 建設業界の経営危機対策の意味もあって、環境破壊型開発事業の継続や体止していた事業計画の復活が各地で見られる。各地域が抱える個々の課題の取り組みをつよめるとともに、全国的にみてその時々に商い重要性が認められる課題に、全国の力を集中して支援する取り組みも必要である。

A 水郷・水都を再生させる取り組みの中から、水郷・水都全国会議として、いくつかの事業を選定し、応援して、水郷・水都再生のモデルづくりに取り組むことを考えてもよい。モデルづくりの実践は再生の方法論を豊かにし、これを全国に普及させることによって、水郷・水都運動の新しいスタイルを創造することが期待される。

B 過去22年間の経験と実績を踏まえ、水郷・水都全国会議を団体・個人の会員制にし、名簿を整理し、会費制にする等の、最低限の組織的な整備を行うことが望ましい。その目的は、水郷・水都全国会議の活動の継続性を保障し、若い世代に運動を継承していく計画性を生み出すとともに、対外的に責任の所在を明確にするためである。その際には、非会員である団体・個人の自由な参加は、保障されるようにしておかねばならない。
 イメージとしては、水郷・水都全国会議にセンター兼事務局機能を置き(当面、いずれかの団体で受託)、全国各地の水郷・水都運動の系統的な蓄積をおこない、調査研究を活性化し、ニュースの発行など情報交流と情報発信力を高め、各地の運動への支援等の諸機能を強めること、また、調査・研究スタッフは、専任を置かず、研究者・法律家・技術者等の登録制とすることが考えられる。
 このような組織整備の検討のために、全国会議共同代表のもとに「組織整備検討チーム」(仮称)を置き、次回の全国大会を目処に検討結果を報告することにしてはどうであろうか。

 (この基調提案は、これまでの運動の到達点とこれからの方向性の議論を深めるために作成した。草案を保母武彦(現地実行委員会委員長)が担当し、実行委員会での討論を踏まえ整理したものである。)

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