第29回水郷水都全国会議・霞ヶ浦大会
導水決議
霞ヶ浦導水事業の中止を求める決議
生態系を破壊し、無駄な血税を流し込む霞ヶ浦導水事業の推進は、「政治的犯罪」である。東日本大震災及び福島原発大事故により従来の開発指向が問われ、人の生き様と科学のあり方が質されている。
利根川流域の水資源開発の一環である「霞ヶ浦開発事業・霞ヶ浦導水事業」は、高度経済成長期の”申し子”である。霞ヶ浦導水事業は、霞ヶ浦と那珂川を約43キロメートルのトンネルで結び(流況調整河川)、都市用水の新たな確保などをあげている。
私たちは、導水事業の目的がすべて破たんしていることを実態的に、科学的に示した。また合理的な提案も行い、さらに導水事業は那珂川の固有の生態系を大きく変えてしまうことを警告してきた。
しかし、「開発ありき」の国土交通省は聞く耳をもたなかった。それに留まらず、事業延長を4回も行った。霞ヶ浦導水事業は、1985年7月1日に策定し、事業費1600億円、事業完成1993年度であったが、2015年まで延長、総事業費も1900億円と増額している。茨城県知事が事業延長に「同意」をしたことで茨城県民は約850億円を負担することになった。
現在、導水トンネルの完成は約14キロメートルで全体の32%の進捗であるが、総事業費1900億円の8割に相当する1490億円を出費した。2015年度に事業完成の見通しはなく、国交省は5回目の事業延長を画策している。
霞ケ浦からの導水によって、那珂川の魚介類の生態系が破壊されることに危機感をもった茨城・栃木県の那珂川水系7漁業協同組合は、2009年3月3日、水戸地裁に「取水口建設の工事差し止め処分」(あゆ裁判)を求めた。現在、那珂川の上流から下流の漁業協同組合が一体となり、また、新たにシジミを漁獲対象としている大涸沼漁業協同組合も加わり、霞ケ浦導水事業の中止に向けて法廷での闘争が続けられている。
汽水湖であった霞ヶ浦は、明治期以降の「利根川東遷事業」、高度経済成長を支えた「霞ケ浦開発事業」などの歴史に、東日本大震災による地盤沈下・福島原発大事故による放射性物質の蓄積などの被害が新たに加わった。
このような霞ヶ浦の新たな歴史に立っている私たちの課題は明確で、霞ヶ浦と共生する抜本的改革案を創り実践することである。その先陣を切るのは、霞ケ浦導水事業を中止させることである。
以下、具体的な改革案である。
(1)霞ヶ浦導水事業の延長は認めない。茨城県知事の事業「同意」に反対する。
(2)那珂川水系全8漁業協同組合の霞ヶ浦導水事業を中止させる「あゆ・しじみ裁判」に、全面的な支援を行う。
(3)導水トンネル予定地に権利設定される「区分地上権」を、市民・漁業者が土地所有者から譲り受け・登記する活動を行う。
(4)那珂川の魚介類の生息環境及び、涸沼のシジミなどの生息環境を守る。
(5)既存の導水トンネルは、「東海原発」事故が、仮に起きた時の避難場所として活用する。
第29回水郷水都全国会議霞ヶ浦大会参加者一同
2013年10月14日